児島が「国産ジーンズの聖地」と呼ばれる理由
児島は倉敷市の南、瀬戸内海と四国へ延びる瀬戸大橋を望む海辺の町で、1967年に倉敷市と合併しました。繊維の歴史はジーンズよりずっと古く、江戸時代には塩分が多く稲作に向かない干拓地で綿花が栽培され、刀の柄に巻く真田紐、足袋、のちには帆布や作業着が作られました。
20世紀には学生服の一大産地となり、1950年代までは全国の詰襟やプリーツスカートの多くが児島で縫われ、今も学生服の主要産地です。合成繊維の登場で市場が揺らぐと、縫製業者は厚手の綿製品に活路を求めます。それが戦後に米兵が持ち込んだジーンズでした。
1965年4月、マルオ被服(のちのビッグジョン)が国産初のジーンズを発売します。ミシン、リベット、ボタン、ファスナー、糸までアメリカから輸入しての挑戦でした。1962年創業のベティスミスなどが続き、ベティスミスは国内初期の女性用ジーンズブランドを発表しています。1970〜80年代には、国産ジーンズの評価を高めた加工技術の多くも児島で生まれました。
現在は岡山県の備前・備中と広島県東部の備後からなる三備地域が国産デニムの中心で、紡績、染色、織布、縫製、加工の工場が車で1時間圏内に集まっています。2023年の生産量は約2,390万㎡で国産デニムのほぼ100%。福山のカイハラ1社で国内シェアの5割以上を占め、欧米のラグジュアリーブランドの多くもこの地域の生地を使っています。

インディゴ染めとセルビッジ織機:日本のデニムの特徴
愛好家が「ジャパニーズデニム」と呼ぶ品質は、この地域が得意とする3つの工程に支えられています。
- ロープ染色:経糸をロープ状に束ね、インディゴの染液に浸しては引き上げて空気で酸化させる工程を繰り返します。芯まで染まらず中心が白く残るため、はき込むほど色落ちし、持ち主のしわが刻まれます。回数が多いほど深い青に。三備地域には何百年にもわたる藍染めの伝統があり、今も天然藍で手染めする工房があります。
- シャトル織機:現代の織機より幅が狭く、はるかに遅い旧式のシャトル織機は、幅約80cmで両端がほつれない生地を織ります。色糸が入ることも多いこの耳がセルビッジ(セルフエッジ)です。生地には不均一さと密度、高速織機にはない凹凸が生まれます。地域には数十台の旧式織機を動かし続ける機屋もあり、海外から買い戻した機械もあります。
- 縫製と加工:チェーンステッチ、リベット、裾上げ、そしてストーンウォッシュ、バイオ加工、手作業の加工など、児島が得意とする洗い加工。
児島ブランドのセルビッジジーンズは2万〜4万円が一般的で、天然藍の生地はさらに高価です。未洗いの「リジッド(生デニム)」は最初は硬く、数か月はき込んでから初めて洗うことで自分だけの色落ちが生まれます。最初の洗濯で縮む(生地により丈が1〜2cm程度)ことも踏まえ、児島の店ではサイズ選びの相談に気軽に乗ってくれます。
工程を実際に見たい場合は、地元ブランドや観光協会を通じた工房・工場見学が最適です。機屋は事前の手配なしには公開されていません。

児島ジーンズストリート:店、価格、歩き方
児島ジーンズストリートは、かつて児島で最もにぎわい、空き店舗が目立つようになっていた味野商店街を活用したものです。2009年から市と地元ブランドが再生に取り組み、現在は旧野﨑家住宅(塩田王・野﨑家の邸宅で見学可能)のあたりから児島市民交流センターまでの約400mに、ジーンズショップ、工房、カフェ、ギャラリーなど約40店舗が並びます。
頭上にジーンズが吊るされ、自動販売機やベンチもデニム柄、マンホールまでインディゴブルーと演出は徹底しています。とはいえ中心は地元ブランドの直営店で、デザイナー自身が店に立ち、定番からアーカイブ、ときには型落ち品まで扱っています。
歩き方のポイント:
- アクセス:JR児島駅から徒歩15分、または路線バス。駅、ストリート、工房を結ぶ「ジーンズバス」は、時期により金・土・日・祝日のみの運行です。
- 営業時間:多くの店は10時ごろ〜18時ごろ。平日に定休日を設ける店が多いので、平日の日中か週末に。
- 予算:地元ブランドのジーンズは15,000〜40,000円、バッグやカードケース、バンダナ、靴下などの小物は数千円。裾上げはその場で、チェーンステッチのミシンで無料〜数百円の店もあります。
- 免税:パスポート提示で免税販売を行う店もあります。2026年後半から制度がリファンド方式に移行するため、店頭で確認を。
- 所要時間:散策なら2時間、デニム好きなら半日。
近くには、国内最大級の商家建築である旧野﨑家住宅や、瀬戸大橋を望む鷲羽山の展望台(車で20分)もあります。
児島で自分だけのジーンズを作る:ベティスミスの体験
児島で最も人気のある体験は、自分で仕上げたジーンズを持ち帰ることです。最も体制が整っているのが、中心部から少し離れたベティスミス ジーンズミュージアム&ヴィレッジで、無料のジーンズミュージアム、同社が「日本最古のジーンズ工場」とする工場、ショップ、カフェ、体験工房がそろっています。
体験の流れ:
- 試着:メンズ(レギュラーストレート、スリムストレート、ボタンフライ)、ウィメンズ(スリム、ブーツカット、ワイド、ロングスカート)から型とサイズを選ぶ。
- パーツ選び:ボタン1個、リベット6個、革ラベル(羊革、牛革、デッドストックの織りネームなど)。
- 打ち付け:足踏み式のプレス機でボタンとリベットを自分で打ちます。踏み込むので、スニーカーで。
- 仕上げ:革ラベルの縫い付けと裾上げはスタッフが担当。その間にミュージアムを見学。全体で約1時間です。
2026年の料金:OMIYAGE JEANSは体験料2,200円込みで11,000円(税込)〜。上質な国産デニムを使うDENIM WORKSは2026年9月1日から22,000円(税込24,200円)〜。1グループで貸切できるVIPルームは通常の体験に1時間3,300円の追加。予約はウェブか電話(086-473-4460)で。
営業時間は3〜11月が9:00〜18:00、12〜2月が9:30〜17:00(平日は12〜13時昼休み)、年末年始休業。時間がない場合は、ショップでデニムキーホルダーやポーチにリベットを打つ短い体験もできます(要予約)。
アクセスはJR児島駅からバスかタクシーで約15分。倉敷美観地区からも複数の路線バスがありますが1時間以上かかるため、岡山駅経由の電車が便利です。
ほかの児島ブランドでも、工房見学、藍染め、縫製体験を受け付けている場合がありますが、内容が変わりやすいので予約時に確認しましょう。
倉敷美観地区と大原美術館:倉敷の見どころ
児島から約30分の倉敷では、地域を豊かにした商人と紡績の歴史に触れられます。倉敷美観地区は、柳並木の倉敷川沿いに、なまこ壁の白壁土蔵や江戸時代の米・綿の商家が並ぶ町並みです。川舟流し、倉敷帆布やガラス、デニムなどの工芸品店、蔵を改装したカフェなど、半日はゆうに過ごせます。
見どころ:
- 大原美術館:倉敷紡績の社長・大原孫三郎が1930年に開いた、日本初の私立西洋美術館。エル・グレコ、モネ、ゴーギャンなどの西洋絵画、近代日本美術、工芸、東洋美術を所蔵しています。入館料は一般2,000円(18歳未満500円)、9:00〜17:00、月曜休館、冬期休館あり。2026年は修復を終えたエル・グレコ《受胎告知》の特別展示が行われています。分館の一部はメンテナンスで休館中のため事前に確認を。展示室内は撮影禁止です。
- 倉敷アイビースクエア:1889年に操業を始めた倉敷紡績の旧工場で、蔦に覆われたれんが造り。現在はホテル、資料館、店舗に。綿とデニムを結ぶ地域の歴史を体感できます。
- 夜の倉敷川:日暮れとともにライトアップされ、日帰り客が帰ったあとの静けさは格別。宿泊する一番の理由です。
美観地区にも児島や地域のデニムブランドの店が複数あるため、児島まで行く時間がなければここで購入することもできます(品ぞろえは児島の方が豊富です)。

岡山から倉敷・児島への行き方と滞在時間
拠点は山陽新幹線の岡山駅です。新大阪からのぞみで約45分、広島から約35分、東京から3時間強。
- 岡山→倉敷:JR山陽本線で15〜17分。美観地区は倉敷駅から徒歩10〜15分。
- 岡山→児島:JR瀬戸大橋線(高松行き快速マリンライナーや児島行き)で約25分。児島は四国へ渡る前の最後の駅です。
- 倉敷↔児島:直通バスはありますが1時間以上。電車なら岡山で乗り換えて45分〜1時間。車や貸切バスなら約30分。
- JRパス:上記のJR線はすべて利用可能です。
滞在時間の目安:
- 日帰り(大阪・広島発):午前に児島(ジーンズストリート、体験)、午後に倉敷(美観地区、大原美術館)。可能ですが、体験を入れると慌ただしくなります。
- 倉敷に1泊:最もおすすめ。午後に到着して夜の倉敷川を楽しみ、翌朝開館と同時に大原美術館、その後児島へ。
- 2日以上:直島の美術館(岡山から50分の宇野港からフェリー)、後楽園と岡山城、醤油蔵の小豆島などを組み合わせて。
季節を問わず楽しめますが、ゴールデンウィークや夏の週末の美観地区は非常に混み合います。大原美術館は月曜休館なので、倉敷を月曜に組まないようにしましょう。
団体で児島・倉敷へ:ジーンズ作り体験と工場見学
児島のデニムは、手を動かす体験、持ち帰れる記念品、そして学生服からジーンズへの転換、海外ブランドの生産、高付加価値化といった産業の物語がそろっており、企業団体に最適なテーマです。おすすめの形:
- ジーンズ作り体験:ベティスミスでは1グループ貸切の部屋があり、20〜40名なら試着、リベット打ち、ミュージアム、ショップを2〜3時間でローテーション。名入れの革ラベルを付けてインセンティブの記念品にすることもできます。
- 工房・工場見学:縫製、洗い加工、織布などを10〜20名の少人数で。ブランドや観光協会を通じて事前に手配します。職場なので、つま先の覆われた靴、撮影は許可を得てから。
- 藍染め体験:ハンカチやトートバッグを1〜2時間で染めます。汚れてもよい服装と手袋を。
- 倉敷の夜:美観地区の蔵を改装したレストランで夕食、ライトアップされた倉敷川の散策、倉敷アイビースクエアや地区内の旅館に宿泊。
注意点は、児島の店の多くが小規模(5〜8名ずつ入店)、ジーンズストリートの大型バスの駐車が限られること、大原美術館は撮影禁止で月曜休館であること。サイズは事前に参加者の寸法を集めておくと準備がスムーズです。
SHINOGI DMCでは、大阪や広島発で、貸切の体験、工場見学、バイリンガルガイド、交通手段を含めて手配し、直島や倉敷泊との組み合わせも提案します。
よくあるご質問
国産ジーンズ第1号はどこで作られましたか。
岡山県倉敷市児島で、のちのビッグジョンであるマルオ被服が1965年4月に製造しました。
児島のジーンズ作り体験の料金はいくらですか。
2026年のベティスミスでは、OMIYAGE JEANSが11,000円(税込)〜、DENIM WORKSが22,000円(税込24,200円)〜で要予約。所要約1時間です。
児島ジーンズストリートへの行き方は。
岡山からJRで児島駅まで約25分、徒歩またはバスで約15分。車なら瀬戸中央道児島ICから。
セルビッジデニムとは何ですか。
幅が狭く低速の旧式シャトル織機で織られ、生地の端がほつれないように閉じたデニムです。密度が高く表情のある生地で、色糸の入った耳は裾を折り返すと見えます。
大原美術館の入館料はいくらですか。
一般2,000円、18歳未満500円です。開館は9:00〜17:00、月曜と冬期に休館があります。
倉敷と児島は1日で回れますか。
岡山、大阪、広島からなら、午前に児島、午後に倉敷で回れます。ジーンズ作り体験を入れると慌ただしいため、倉敷に1泊すれば夜の倉敷川と開館直後の大原美術館を楽しめます。
Rédaction SHINOGI DMC · 更新日
出典
- Nippon.com — Japanese Jeans Turn Sixty: Visiting Okayama's Denim Capital, Kojima
- JNTO — Create your own indigo denim in Kojima, home of Japanese denim
- Betty Smith — Atelier « fabriquer son jean » (tarifs 2026, horaires, déroulé)
- Betty Smith — Jeans Museum (entrée gratuite, salle VIP, accès)
- Betty Smith — Accès (bus, jeans bus)
- Ville de Kurashiki — Parcours Kojima (rue des jeans)
- Ohara Museum of Art — Informations visiteurs
- Ohara Museum of Art — Site officiel (expositions 2026)
- Museum.or.jp — Ohara Museum of Art (tarifs, jours de fermeture)








