日本で何を食べるか:料理より先に店を選ぶ
まず押さえておきたいのは、日本の飲食店の多くが一つの料理に特化していることです。そば屋は寿司を出さず、天ぷら屋はラーメンを出しません。ヨーロッパで見かけるような何でもそろう「和食レストラン」は、駅ビルや百貨店のレストラン街(8〜9階に多い)に集まっています。迷ったときの団体には便利ですが、最良の選択とは限りません。
この20品を味わうには、店の種類で考えるのが近道です。寿司屋、天ぷら屋、料亭(懐石)、ラーメン屋、飲みながらつまむ居酒屋、屋台や露店、和菓子屋。専門が一つ、店が一つ、ときに行列あり、という構図です。
失敗しないための目安は次のとおりです。
- 営業時間:昼は11時30分〜14時、夜は17時30分からが一般的。昼と夜の間に休む小さな店が多く、伝統的な店はラストオーダーが21時前後と早めです。
- 予算を抑えるならランチ:同じ料理でも、昼の定食やランチコースは夜の2分の1〜3分の1の価格。夜30,000円の懐石が昼は8,000円という例もあります。
- 支払い:2026年は大都市ならほぼカードが使えますが、麺類の店、屋台、露店では現金や交通系ICカード(Suica、ICOCA)が無難です。
- チップ不要:期待も理解もされません。一方で居酒屋ではお通し(300〜800円程度)がつくことがあり、これが席料の役割を果たします。
- 予約:カウンターの寿司、高級天ぷら、懐石は必須。ラーメンは並ぶのが基本です。
季節も大切です。懐石の献立は毎月変わり、うなぎは夏(7月下旬の土用の丑の日)、おでんやしゃぶしゃぶは冬の料理。同じ旅程でも4月と11月では皿の上がまったく違います。
寿司、天ぷら、懐石、すき焼き、しゃぶしゃぶ:予約して味わう料理
この5品は予約が前提で、ときには数週間前から席を押さえる料理です。予算に占める割合も大きくなります。
1. 寿司:知っておきたいのは3段階。回転寿司(レーンまたはタブレット注文、2貫1皿150〜500円)、昼のおまかせ定食がある町の寿司屋(2,500〜5,000円)、そして職人が15〜20貫を握るカウンターのおまかせ(15,000〜50,000円、銀座ではそれ以上)。カウンターでの作法は別の記事で詳しく紹介しています。
2. 天ぷら:重い揚げ物のイメージは不要です。カウンターでは職人が海老、きす、きのこ、旬の野菜を一つずつ揚げ、目の前に置いてくれます。揚げたてを塩か大根おろし入りの天つゆで。昼3,000〜8,000円、夜10,000〜25,000円。
3. 懐石:八寸、お造り、煮物、焼物、ご飯と味噌汁、水菓子と続く8〜12品のコース。本場は京都です。料亭の夜は15,000〜40,000円、座敷で2時間ほど。旅館では夕食の会席が宿泊料金に含まれるのが一般的です。
4. すき焼き:薄切りの牛肉を醤油、砂糖、みりんの甘辛い割下で煮て、溶き卵にくぐらせます。関西は肉を砂糖で焼きつけてから味をつけ、関東は割下で煮るのが基本。和牛なら8,000〜20,000円。
5. しゃぶしゃぶ:牛肉や豚肉を薄いだしに数秒くぐらせ、ごまだれやポン酢で。すき焼きより軽く、時差ぼけの胃にもやさしい料理です。肉によって4,000〜15,000円。
避けたいのは、長距離便で到着した初日の夜に懐石を入れること。現地時間21時に座敷で2時間正座するのは、この価格の料理を楽しむ最適なタイミングとは言えません。旅程の中盤に入れるのがおすすめです。

ラーメン、うどん、そば、とんかつ、カレー、おにぎり:2,000円以下でおいしく
会社員が昼に食べる日常の料理こそ、旅の記憶に強く残ることがよくあります。
6. ラーメン:小麦の麺を醤油、塩、味噌、豚骨などのスープで。2026年は1杯1,000〜1,600円が目安です。入口の券売機で注文する店が多く、音を立ててすするのは普通のこと。地域ごとのスタイルはラーメンガイドで紹介しています。
7. うどん:太くてもちもちした小麦の麺。温かいかけだしでも、冷たいつけ汁でも。セルフ式チェーン(丼を受け取り、天ぷらやトッピングを取り、最後に会計)なら500〜900円でしっかり一杯。本場は四国・香川の讃岐うどんです。
8. そば:そば粉の麺。おすすめは冷たいざるそば。食後はつけ汁にそば湯を注いで飲みます。800〜1,800円。そばは重いアレルギーを起こしやすい食材で、うどんと同じ釜でゆでる店も多い点に注意が必要です。
9. とんかつ:パン粉をまぶして揚げた豚肉に、おかわり自由のキャベツ、ご飯、味噌汁、濃厚ソース。脂のあるロースか、赤身のヒレを選びます。定食で1,500〜3,500円。
10. カレーライス:とろみがありマイルドでほんのり甘い日本のカレー。カツをのせたカツカレーも定番です。19世紀末に英国海軍経由で伝わり、今や国民食。800〜1,500円。
11. おにぎり:焼き鮭、梅干し、ツナマヨ、明太子などを包んだご飯を海苔で巻いたもの。コンビニで150〜300円。包装は①②③の順に開けると海苔がパリッとしたまま食べられます。
朝食ならコンビニのおにぎりと緑茶で十分。昼のとんかつ定食や冷たいそばは、パリの駅のサンドイッチより安く済みます。
お好み焼き、たこ焼き、串カツ:大阪の粉もんと庶民の味
大阪は「食い倒れ」の街。実際には、立ったまま、あるいは鉄板の前に座って、安くたくさん食べられる街と言ったほうが近いでしょう。
12. お好み焼き:生地、キャベツ、豚肉や魚介を鉄板で焼き、ソース、マヨネーズ、かつお節、青のりをかけます。大阪ではテーブルの鉄板で客が自分でコテを使って焼く店も多くあります。広島では具材を層に重ね、焼きそばを挟み、焼くのは店の人です。1,000〜2,000円。
13. たこ焼き:たこを入れた生地を専用の鉄板で丸く焼き、ピックで返したもの。6〜8個で500〜900円。ありがちな失敗は、すぐにかぶりつくこと。中は数分間、驚くほど熱いままです。道頓堀周辺や祭りの露店ならどこでも見つかります。
14. 串カツ:牛肉、豚肉、海老、野菜、チーズなどを串に刺して揚げたもので、1本100〜300円。新世界の名物です。どの店にも書いてあるルールがソースの二度づけ禁止。追加でソースをつけたいときは、生のキャベツをスプーン代わりにします。
観光の後の気軽な夜にぴったりの料理で、45分ほどで食べ終わり、にぎやかに話しても誰も気にしません。ただ道頓堀は18〜21時が大混雑。新世界や天満周辺のほうが落ち着いていて、価格も手頃です。

焼き鳥、餃子、唐揚げ、おでん、うなぎ:居酒屋とカウンターの夜
居酒屋は日本で最も融通のきく業態です。少しずつ注文し、取り分け、ビールや日本酒、ハイボールを飲む。このリストのいくつもの料理を一度に味わえます。
15. 焼き鳥:備長炭で焼く鶏の串。もも、つくね、皮、ハツ、砂肝、手羽など。味付けは塩かタレを選びます。居酒屋で1本150〜400円、専門店のおまかせは6,000〜12,000円。東京なら有楽町のガード下や新宿の思い出横丁が雰囲気抜群ですが、1軒6〜10席ほどと狭いのが難点です。
16. 餃子:豚肉とキャベツの餡を包み、片面を焼いて蒸し焼きに。宇都宮と浜松が「餃子の街」を競い、福岡では一口餃子が名物。6個で400〜700円。
17. 唐揚げ:醤油と生姜に漬けた鶏肉を片栗粉で揚げたもの。子どもの好物で居酒屋の定番、レモンが添えられることが多い一品です。皿全体にレモンをかける前に一声かけるのが無難。日本では意見が分かれる話題です。
18. おでん:大根、卵、厚揚げ、練り物、こんにゃくをだしで長時間煮込んだ冬の料理。居酒屋や屋台、10月〜3月ならコンビニにも並びます。1個100〜300円。
19. うなぎ:たれをつけて焼いたうなぎをご飯にのせた鰻丼・鰻重。名古屋のひつまぶしは、最初はそのまま、次に薬味で、最後にだしをかけて。価格は上がっていて、名店では1人前4,000〜8,000円です。
チェーンの居酒屋では、飲み放題(90〜120分、1人1,500〜2,500円)とコース料理のセットが一般的。日本企業の懇親会でもよく使われる形式です。

和菓子、団子、抹茶:日本の甘味とどこで味わうか
20. 和菓子:あんこ、もち米、寒天を基本にした日本の伝統菓子。ヨーロッパの菓子に比べて甘さは控えめで、苦みのあるお茶と合わせることを前提にしています。
覚えておきたい主な種類は次のとおりです。
- 上生菓子:季節によって形を変える小さな練り切り(春は桜、秋は紅葉)。茶席で出され、日持ちは当日限り。京都の和菓子屋で1個400〜800円。
- 団子:もち粉の団子を串に刺し、甘辛いみたらしやあんこで。150〜300円。
- 大福:あんこを包んだ餅。冬から春には苺を丸ごと入れた苺大福も。
- たい焼き:あんこやカスタードを詰めた鯛の形の焼き菓子。食べ歩きの定番で200〜300円。
- かき氷:削った氷にシロップや抹茶をかけたもの。夏季限定の店が多くあります。
京都には創業300年を超える老舗を含む和菓子屋が集まり、甘味処では抹茶と上生菓子のセットが1,000〜1,800円ほど。東京ではデパ地下に数十の和菓子店が並び、食べ比べや手土産選びに便利です。ただし賞味期限が短い品が多いので確認を。
食べているものを理解するには、和菓子づくり体験(約1時間30分)がどんな試食よりも効果的です。職人の道具で2〜3個を仕上げ、お茶と一緒にいただきます。

団体で日本の料理を楽しむ:形式と手配のポイント
20名、50名、150名となると、問題は「何を食べるか」ではなく「どの形式で食べるか」です。日本の名店は小さい店が多く、それが最大の制約になります。
- カウンター(寿司、天ぷら、高級焼き鳥):一般的に8〜12席。団体なら10〜12名で貸切にするか、同じ夜に3〜4店へ分け、それぞれに引率者をつけます。予約は4〜8週間前、デポジットを求められることも多くあります。
- 個室での懐石:京都の料亭や大型ホテルには10〜60名の座敷があります。座椅子やテーブル席を依頼しましょう。欧米の参加者の多くは2時間の正座に耐えられません。
- お好み焼きや焼肉の鉄板:4〜6名で1枚の鉄板を囲むので、チームの会話が自然に弾みます。大阪にはワンフロア40〜80名で貸切できる店もあります。
- ガイド付き食べ歩き:10〜15名ずつにガイドがつき、道頓堀、黒門市場、福岡の屋台などを2時間30分〜3時間で。ガイドが注文と支払いをまとめるので、15回並ぶ必要がありません。
- 居酒屋の貸切:コース料理と飲み放題で1人6,000〜12,000円。50名以上の夜には最も経済的な形式です。
トラブルを防ぐ3つの習慣は、申込時に食事制限とアレルギーを集めること(だしを使わない献立には準備期間が必要です)、1人あたりの飲み物予算を決めること、移動を手配すること。22時以降に60名がタクシーや地下鉄で動くのは簡単ではありません。
短い日程で幅広く味わいたい団体向けに、SHINOGI DMCでは懐石の夕食、大阪の食べ歩き、寿司や和菓子の体験を組み合わせたプログラムを組み、実際の収容人数と食事制限への対応を確認済みの店を手配しています。
よくあるご質問
初めての日本旅行で食べておきたい料理は。
カウンターの寿司、ラーメン、天ぷら、大阪のお好み焼きやたこ焼き、居酒屋の焼き鳥、京都の懐石、抹茶と和菓子。昼はうどんやそば、とんかつを加えると幅が出ます。
2026年の日本での食事代の目安は。
ラーメン、うどん、とんかつなどの昼食は1,000〜2,000円、居酒屋の夕食は3,000〜6,000円、夜の懐石や寿司のおまかせは15,000〜40,000円が目安。チップは不要です。
大阪と広島のお好み焼きの違いは。
大阪は具材を生地に混ぜ、客がテーブルの鉄板で焼くことも多いスタイル。広島は具材と焼きそばを層に重ね、店の人が焼き上げます。
日本の飲食店は予約が必要ですか。
カウンターの寿司、高級天ぷら、懐石、7名以上の団体は数週間前の予約が必要です。ラーメン、うどん、回転寿司、食べ歩きは並ぶのが基本です。
大阪の夜に一晩で食べるなら。
道頓堀や天満でたこ焼きとお好み焼き、そのあと新世界で串カツ(ソースの二度づけは禁止)。飲み物込みで1人3,000〜5,000円が目安です。
50名の団体で懐石を楽しめますか。
大広間のある料亭や京都のホテルなら可能です。2〜3か月前に予約し、テーブル席か座椅子を依頼、食事制限は3週間前までに伝えましょう。
Rédaction SHINOGI DMC · 更新日









